従業員が動いてくれない!?

HPをご覧頂き、ありがとうございます。
継ぐ研ネット代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)と申します。
本コラムは、経営者を親にもち、会社を継ぐ可能性がある方を対象に、継ぐ「不安」をテーマに書いていきたいと考えています。
今回は、
従業員は、私(後継者)の話を聞いてくれるだろうか?
という不安です。
親のようにカリスマ性はないし、経験も専門知識もないし・・・。
実際、社長交代後、従業員が思ったように動いてくれない。
従業員が大量に辞めた! など、従業員がらみのトラブルはよく聞きます。
これをやらないと社長に怒られる!?
新社長に交代して1年半ほど経った会社の話です。
従業員十数名の会社ですが、
思うように従業員同士が連携して動いてくれない。
どうしたものか?
という相談をうけました。
そこで、従業員にインタビューを実施。
今までどんな仕事をしてきたか、
社長交代してからどんな仕事をしているか、
などを聞いてから、
こう聞いてみました。
「新社長は、これをやったら怒るだろうな」
「新社長は、これをやらなかったら怒るだろうな」
を、思いつくだけ教えて下さい。
と、
じっくり時間をかけたのですが・・・
思いつかない人が半分。
社長の想いとは異なる回答が半分(笑。
じゃあ、前の社長だったら?
と聞くと、すぐに回答が返ってきます。
しかも、みな同じような内容です。
この会社、社長交代時に、いろいろあって、
従業員が従っていた「暗黙のルール」が壊れていることがわかりました。
そして、新社長がこう動いて欲しいと願う、
次の「暗黙のルール」が育っていない。
これでは従業員同士が連携し、 自律的に仕事ができるハズがありません。
目に見えない独自ルールを承継する
社長が、
「これは違う」と感じ、
「こうしろ!」と叱咤、激励する。
これを、日々、繰り返すことで、
従業員が、他の従業員に社長の言葉を伝え、
やがて、その会社独自の「暗黙のルール」ができる。
後継者は、この「暗黙のルール」を把握し、
少々、疑問に思うルールでも、
最初は、決して壊さず承継する覚悟が必要なのです。
もちろん問題あるルールは、
変えるべきですが・・・
自分の色を出したい、自分を認めて欲しいと、
前社長と、異なる発言を繰り返すと・・・
この「暗黙のルール」が壊れてしまいます。
そして、従業員は、
「この場合、私は動いていいのかな?」
「動いたら怒られるかな?」
となり・・・やがて・・・
「指示がでるまで待つか?」
となってしまいます。
こうして業務効率、業務スピードが悪化し、
指示を出さずとも動いていた組織が機能停止するのです。
継ぎにくい暗黙のルール
この「暗黙のルール」
誤解を恐れずに言うと、明文化されていない理念、想い、文化(カルチャー)です。
理念というと、拒絶反応を示す方が多いので(笑
もう一つ、事例を。
従業員30名ほどの会社で、事業承継の手順を、
ご説明していた時の話です。
「人」「モノ」「金」「情報」という経営資源。
これを承継しないといけないのが事業承継。
この4つの経営資源承継の中で、
一番はじめに承継するのが「情報」。
そして、この「情報」のなかでも・・・
企業理念の承継は、放置されやすい
と、ご説明したところ・・・
後継者は、
そもそも企業理念って、そんなに重要なの?
毎朝、理念の読み合わせとか、古くない??
と、
経営者も、
経営理念なんて高尚なものはない!
うちの規模では必要ない。
と、鼻で笑われてしまいました・・・
自社株の節税対策で、もっといい方法はないのか?
以外は、聞く耳をもってもらえませんでした。
数年後、
若社長の代で、従業員が大量に辞め、
かなり苦労している。
と、風の噂で聞きました。
実際、明文化された理念がなくても、
儲け続けている会社はありますし、
本当に、企業理念を承継するのは大事なの?
と、思うのが普通の感覚かもしれません。
しかし、先に見たように、
これをやったら社長に怒られる
これをやらなかったら社長に怒られる
という、社長がいちいち指示しなくても、
従業員が、自己判断で動いている会社の仕組み、
理念、想い、文化(カルチャー)・・・
名前はともかく、
社長交代時だけは、この「暗黙のルール」を、壊さないように引き継がないと、
従業員の大半が会社を辞めるトラブルになりかねません。
従業員が動いてくれない!?
かがでしでしょうか?
会社が、動いている仕組み、を理解する。
特に、見えない仕組みやルールを調べ、安易に壊さない。
この重要性が、少し、見えたと思います。
当研究会の「決断指南書」では、組織人事戦略として、これらを分析しています。
事業承継では、社長個人の知見に深く依存し、変化し続ける「暗黙のルール」は、
後継者にとって非常に継ぎにくく、注意が必要な課題のひとつです。
ご相談、コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。
以上
投稿者プロフィール

-
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。
最新の投稿
お知らせ2025年4月16日承継者の不安、自信に変える新常識(寄稿)
承継不安の処方箋2025年4月11日後継者とトイレの関係!?
承継不安の処方箋2025年3月29日私にはカリスマ性がないから・・・(後編)
承継不安の処方箋2025年3月22日私にはカリスマ性がないから・・・(前編)