後継者は、失敗するぐらいが、ちょうどいい?

コラム:承継不安の処方箋

HPをご覧頂き、ありがとうございます。
継ぐ研ネット代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)と申します。

本コラムは、経営者を親にもち、会社を継ぐ可能性がある方を対象に、
継ぐ「不安」をテーマに書いていきたいと考えています。

今回は、創業者が、後継社長に言った言葉

後継者は、失敗するぐらいが、ちょうどいい

です。

意味は、わからなくても、
なぜか、少し、ほっとする言葉ですよね?(笑

これ、
実は・・・

後継者が、
創業者の想定より、
優秀すぎて!トラブル発生

そこで、創業者が、
後継者に、つぶやいた言葉です

では、
この事業承継事例をみていきましょう

この会社
中小零細企業が作る電子部品を集め、
国内メーカーに卸している会社でした。

卸なので従業員も数人の会社です

創業者は、引退を決意した際、
自社株を後継者にゆずろうと、
顧問税理士に相談。

自社株の評価は、ほぼ社屋不動産の価格で、
5000万円ほど
そして、後継者に自社株を贈与したら、

贈与税2000万円は必要だが、
相続で渡せば、税金はほとんどかからない
と諭され、贈与しなかった

と、いいます。

そして、創業者は、
経営の一線から身を引き
ほとんど出社しなくなりました

後継者は、
仕入れに悩んでいました。

販売先の国内メーカーが、
将来どの程度買ってくれるのか、
予想が立てにくく、仕入れ数量が難しいと

そこで、

卸している電子部品は、
最終的に、どこで、どんな製品に使われているのか?

最終製品がわかれば、
今後の需要動向を、ある程度、想像できるだろう

という狙いで、調査を開始しました。

調査の結果、

卸した部品の大半は、
販売先の国内メーカーの海外子会社に送られて
最終製品が作られていました。

そして、

海外子会社は、
日本製の壊れにくい電子部品を
タイムリーに欲しがっている

日本製がないときは、
仕方なく、現地の部品を調達して
使っているらしい

親会社は態度がデカイ(失礼)
細かい注文は嫌がる。

しかし、

少ないロットで
タイムリーに
送ってほしいニーズがある

・・・

ならば・・・

英語はできないが・・・
海外とはいえ、日本人がいる会社

日本語のECサイトでも
海外から注文がくるのでは?

と、

試しに、
日本語のECサイトを作ったら
これが大当たり!

親会社に頼まなくても
日本製の電子部品が、
小口ロットで買える!

と評判になり、
口コミが広がり

日本語を話さない現地の会社からも
変な日本語で注文が来たそうです

そして、英語、中国語、タガログ語
語学堪能な社員を増やし、
システムに強い人間も入り、
海外直販は、急拡大したといいます。

海外取引に疎い
高齢の顧問税理から、
若い税理士に変更したことも影響し、

自社株の評価は、まったくやらずに、
数年が経過しました
数年経って、

ふと気になって、
その若い税理士に、
相続税の試算をしてもらったそうです。

そうしたら、

なんと
自社株の評価は、昔の10倍近い5億円

いろいろ対策を練ったとしても、
少なくとも相続税1億円はかかるだろうと・・・

この話をお父さんに報告したとき
お父さんが発した言葉

それが、

お父さん

後継者は、
失敗するぐらいが、ちょうどいい

でした。

自社株の評価は、
長年、5千万円ぐらいだったハズ
その感覚が抜けず

数年で、5億円まで上昇してしまった

相続税も、
ほとんどかからない予定が、

1億円!

引退するとき、
税理士にもったいないと言われても
2000万円払って、贈与しとけば良かった・・・

と、悔やんでも
後の祭り

・・・

後継社長は、
今、親父に死なれたら
会社は売るしかない
・・・

なんのために、
努力してきたんだか・・・

高齢の経営者は、
最後まで、面倒がみられないから

と、

儲かりそうな匂いがあっても、
新しい事業には、手を出さないもの

一方、後継者が育ってくると
銀行も安心して、
融資をしてくれるため、

新しい事業に進出し、
業績が急拡大するのは、
よくある事例です

私は、中小企業診断士なのですが、
この診断士という人種・・・
困ったことに

むやみ、やたらと
企業業績を良くしたがる
(笑

そして、残念なことに、
相続に弱い(笑

後継者も
同じようなタイプ多い気がします。
むやみ、やたらと業績を良くしたい(笑

相続は、親父が考えるもの
親父が大丈夫と言っているから、
あえて考えたくない

私は、
経営に全力を注ぐのが使命

このパターン
結構、多いんですよね・・・

事業の承継は、
最後に、自社株を承継します。

承継中は、
先代の教えを守り
伝統的な事業を続けるのが基本

承継が完了し、(自社株を承継し、)
はじめて、自己流の工夫を繰り返し、
時代にあわせ、先代のやり方を変える

高齢者が考える
昔ながらの承継スタイルには、
やはり、意味があったのです

承継中は、
失敗するぐらいが、ちょうどいい

株価が下がって、無理なく株を渡せるから
というのが、今回の発言だったのですね。

いかがでしたでしょうか?
経営課題のない企業なんてありません
課題が見えると、改善したくなるものです。

しかし、

事業承継期間中は、
改善タイミングを慎重に検討してください

ある問題は、解決したものの、
別の問題を、悪化させる
可能性大ですから

全体がみえてないのに、
見えている部分の課題だけをさわると

非常に危険なことが、
わかって頂けたと思います。

継ぐ!継がない後継者の決断指南書研究会では、企業診断を実施し、課題に対する対策を、実施すべきタイミングを含めてご提案いたします。ご相談、コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。

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