社長!仕事減らして下さい!

コラム:承継不安の処方箋

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

さて、先週、事業承継セミナーで、私が講師として登壇したときのことです。
社長には、「1日の仕事を、4時間になるまで減らしてください」とお願いしています。
こう話した瞬間、会場の後ろの方に座っていた若い後継者らしき方が、
首がもげるのではないかと思うほど、激しくうなずいていました。

今回は、なぜ社長(親)の仕事を減らすことが必要なのか?
そこに潜む「古株社員」という壁についてお話しします。

結論から申し上げます。
事業承継を成功させるために、現社長がやるべき最大の準備
それは、「社長の仕事を、1日4時間で、終わる分量まで減らすこと」です。

「そんな無茶な! 誰が会社を回すんだ!」
と、社長に怒られるかもしれません。
しかし、これには明確な理由があります。

百戦錬磨の「8時間」は、後継者の「24時間」でも終わらない

理由は、シンプルに「能力の差」です。
その道一筋、何十年も荒波を乗り越えてきた社長は、いわば「百戦錬磨の達人」。
会社を熟知し、知識、人脈、勘、トラブル対応力。
これらを無意識レベルで高速処理しています。

その達人である社長が1日8時間かけて回している仕事を、
経験の浅い後継者にそのまま渡せば、24時間働いても終わるわけがない!

あたりまえ、と言えば、あたりまえなのですが、
これを解っていない社長があまりにも多いのです。

社長は、朝10時に来て14時には帰る。
このレベルまで仕事を圧縮・整理して初めて、
後継者が8時間~10時間働いてなんとかこなせる仕事量になる

これが、事業承継に成功している会社の社長の考え方なのです。
ただし、仕事を4時間に減らしてもらうには、注意点があります。

社長はこう言います。
「そんなに仕事を任せたら、現場が見えなくなるだろう!」
「それで、まともな経営判断ができるか?」

その通りです。
単純に、社長の仕事を人に渡すと、社長は会社が見えなくなります。
だからこそ、渡した仕事の「フィードバック(報告)の仕組み」が必要になります。

この仕事を渡した相手から、正確な情報を吸い上げる仕組みがないと
経営者は、まともな判断はできません。

しかし、オーナー社長は、
「いちいち報告書なんて書かせるな」
「俺が現場に行って直接聞くからいい」
「ITだのシステムだの、金がかかるし面倒だ」
となります(笑

でも、それではダメなのです。

「俺が聞けば答えてくれる」のは、現社長のカリスマ力です。

社長が引退した後、
カリスマ力なき若き後継者が、自分より20歳も年上で、社長の右腕だった古株社員に、

「あの件、どうなってますか?報告してください」

と言って、情報はもらえるのでしょうか?
「若造が、俺を管理する気か?」
「先代とはツーカーでやってきたんだ。いちいち細かい報告なんてできるか!」
と、考える古株は必ずいます。

若社長が、古株社員から情報を聞き出すのは、至難の業なのです
情報が出てこなければ、後継者は目隠し運転を強いられ、
経営判断を誤り、やがて会社は傾きます。

だからこそ、現社長の「強力なリーダーシップ」で、
全社員に「仕事の報告を情報システムに入力する癖」を、つけさせることです。

「社長への報告は、口頭ではなく、必ずこのシステムに入力すること」
「入力がない仕事は、評価しない」
「朝10時、私が出社するまでに、全報告を入れておくように」
と指示を出すのです。

最近は、AIが発達してきたので、業界によっては、
文章を書かなくても、音声録音でいいかも知れません。

これを、現社長の命令として徹底させるのです。
古株社員も、長年仕えた社長の命令であれば、しぶしぶでも従います。

今のうちに、業務日報や顧客情報、進捗状況が、
属人的な「職人の頭の中」ではなく、
「会社のシステム」に蓄積される流れを作っておく。

そうすれば、後継者は、古株社員に頭を下げて回らなくても、
情報システムを見れば会社の状況が把握
でき、
的確な経営判断が下せるようになります。

社長が仕事を4時間に減らすプロセスとは、
実は、「情報を見える化し、後継者が古株社員の機嫌をとらずに経営できる環境を作ること」なのです。

しかし、子供からは……

「お父さん、仕事を減らして、情報システムを入れて、古参の〇〇さんに報告入力を義務付けてよ」

なんて言えないですよね?
こんなことを 言った瞬間、
「お前は楽をしたいのか!」
「〇〇さんを信用していないのか!」と、
カミナリが落ちるのがオチです。

また、古株社員からも「若社長は冷たい」と反発を買うでしょう。

ここは、第三者の出番です。
私たちのような専門家であれば、感情論ではなく「組織の生存戦略」として社長に説明ができます。

「社長、素晴らしい会社ですね」
「社長の頭の中にあるノウハウと、ベテラン社員さんの頭の中にある情報こそが、御社の最大の資産です」

「これをデータとして残さないのは、もったいないですよ」
「社長が4時間で帰っても、スマホ一つで全社員の動きが手に取るようにわかる」
「そんな仕組を作りませんか? それが後継者を守る最強の鎧になります」

そう伝えると、システム嫌いの社長も「孫子の代まで会社を残すためなら」と、耳を傾けてくれます。

「社長の仕事を減らし、渡した仕事の情報を吸い上げる仕組みを作る」
これは、後継者が古株社員との人間関係で疲弊せず、経営に集中するために不可欠な準備です。

もし、あなたが「親の仕事量が多すぎるのでは?」
と感じているなら、ぜひ一度ご相談ください。

あなたの代わりに、社長が納得するロジックで、
「4時間勤務とシステム化」の重要性をご説明いたします。

ご相談、コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士60歳。神戸市出身。

Follow me!