後継者の承継不安を消し去る魔法の言葉

コラム:承継不安の処方箋

HPをご覧頂き、ありがとうございます。

継ぐ!継がない?後継者の「決断指南書」研究会(略称:継ぐ研ネット)
代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)です。

このコラムでは、経営者を親にもつ皆様の、会社を継ぐ「不安」を、少しでも軽くする方法について書いていきたいと思います。

さて、後継者(候補)の皆様は、どんな不安を抱えていますか?
いろいろあるとは思いますが、

経営できるか不安

という不安はあると思います。

しかも、会社を継ぐ「決断」は、片道キップ
後戻りもできない。

だから、チャレンジしたい気持ちはあるが・・・
ですよね?

転職するのが、当たり前の今の時代で、
転職ができない仕事を選ぶ怖さ

この状態での決断を、

  • 清水の舞台から飛び降りる覚悟
  • 何がでてくるかわからない箱を、黙って受け取る覚悟
  • 確たる自信も、情報もなく、勝算不明の一か八かの賭け

と、話される2代目経営者がいました。
わかる気がしますよね。

しかし、このような不安山積の状態でも、
ある一言で、承継不安が消し去り、継ぐ決断をされた方がいます。

それが、父である社長から言われた魔法の言葉。

社長(父)

5年だけ社長をやってみないか?
5年やってダメなら会社を売ってもいい

3年ほど前の、ある運送会社の話です。

当時、社長のご子息は、上場会社の子会社役員で、
定年まであと7~8年。

社長は、ご子息の定年後、継いでもらいたい気持ちもある
と、話されていたのですが

社長は当時80歳。

「やはり、あと7年は待てない」
「M&Aで会社を売却したい」

と相談いただき、お手伝いをしていました。

年末に、売却価格(想定)を提出、M&Aアドバイザリー契約のご説明
正月明けに契約する。という段取りでした。

そして、お正月明け
アポの前日に、社長から電話がかかってきました。

すごく明るく大きな声で

社長(父)

売却はやめた!

と、なんの説明もなく、こちらは???です。
翌日、お伺いして話を聞いてみると・・・

「長男が継いでくれることになった!」

と、満面の笑顔

「おめでとうございます!」
「しかし、ご子息は継がないと話されていたのでは?」

詳しく話を聞いてみると・・・

お正月、実家に戻られたご子息とお酒を飲みながら

5年だけ社長をやってみないか?
5年やってダメなら、売ってもいい

と、言って、M&Aの売却試算額の書類一式を見せたそうです。
売却の想定価格は、5億円。

会社の資産は預貯金も多く、多少事業に失敗しても、
負債だけ残る会社でないことは一目瞭然でした。

しばらく沈黙したご子息は、

「この書類、借りていいか?」

と、売却試算額の書類をもって、自宅に帰ったそうです。
数日後、ご子息から電話がかかってきて

5年やってダメなら、本当に売ってもいいんだな?
だったら継ぐ

と言って、決断をされ、会社は早期退職されました。

そんな口説き方もあるのかぁ。

と、気になったので、ほかの会社の2代目、3代目の社長に、
会社を継ぐキッカケを、聞いてみたところ

びっくりしたことに

5年だけ社長をやってみないか?
5年やってダメなら会社を売ってもいい

と、まったく同じセリフを言われて決断した方が、複数いたのです。
そして、どの会社も業績好調の会社だったのを記憶しています。

考えてみると・・・
M&Aで売りやすい会社は、後継者にとっても継ぎやすい会社です。

売りやすい会社は、他社が欲しがる魅力ある会社で、
社長が引退しても実務がまわる会社、
継ぎやすいのも当然ですよね。

しかし、なぜか共通して「5年やってみろ」と、言われているのです。
なぜでしょうか?

そこで、3年ではダメなのですか?と、社長に聞いてみたら、

どんなにいい会社でも、社長交代後、2年~3年は苦労する
一番厳しい頃に、やめていいとは言えないだろう。と。

そういえば・・・
M&Aで会社購入した経営者も、最初の1年は激務。
馴染んでくるのに2年~3年はかかる。

と話される方が多いのです。

M&Aであろうが、後継者が継ごうが、社長交代後の3年は大変

3年を超えて、5年みないと成功か失敗か、結論はでない。
という事なのか、と納得しました。

今回のケースでは、M&A売却という「退路」用意してもらえたことで、
「継がない」と明言していた後継者の承継不安が消え去り、
つぐ決断ができました。

しかし、この承継不安の処方箋、ひとつ問題があります。

それは、後継者側から、親である社長に
「ダメなら売っていい?」とは聞けないことです(笑

そこは、我々、相続に強い中小企業診断士が動きますのでご安心下さい。
後継者の決断を即す魔法の言葉、

5年だけ社長を頑張ってみないか?
5年やってダメなら売ってもいい

と、伝えてみませんか? と
このように、社長にご説明するのは、第三者の我々の役目だと考えています。

承継不安を消し去る魔法の言葉

いかがでしでしょうか?

次回以降も、「承継不安」を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
ご相談、ご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。

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