子会社の経営をやってみるか?

コラム:承継不安の処方箋

HPをご覧頂き、ありがとうございます。
継ぐ研ネット代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)と申します。

本コラムは、経営者を親にもち、会社を継ぐ可能性がある方を対象に、
継ぐ「不安」をテーマに書いていきたいと考えています。

今回は、親の会社に入社し、経験を積むため
小振りな組織の経営を任されるケースって多いのですが・・・

  • 新規事業の責任者
  • 新会社や子会社の社長
  • 支店長、支社長

これ、うまくいかないケースが散見されます。

このような話を、
オーナー経営者(親)から打診されたら、
どうすべきでしょうか?

ある建設会社の社長の話です。

数年前、自社で建築した建物を高級ホテルとして別会社化し、
後継者候補が、この会社の社長になりました。

そろそろ、本格的に、建設会社の承継を開始するので、
後継者が、建設会社に専念するため、
ホテル売却を手伝ってくれ。という相談でした。

ところが・・・
話を進めているとSTOPがかかりました。

いろんな理由がありましたが、
後継者は、ホテル経営を続けたいと・・・

ホテル業を軌道に乗せ、
経営力が確認できたと、本体に戻そうとしたが
戻ってくれない・・・と経営者が嘆かれていました。

繊維製品製造業の会社の社長からも、
同じような話がありました

本業の繊維製品製造業のほかに、数年前
リース業クリーニング業も、立ち上げた会社です。

事業承継に着手したオーナーは、
後継者の負担軽減のため、
本業で、一番規模の大きい繊維製品製造だけ残し、

他の2社をM&Aで売却したい。
という相談を受け、動いたのですが・・・

リース業の社長をしていた後継者が、
リース業を続けたいと言い出して、計画はとん挫。

承継が進まず、社長は嘆かれていましたが、
ぽつりと一言。

社長

よく考えたら・・・
自分が、苦労して立ち上げた仕事
それを手放し畑の違う会社を継げ・・・
って言われても困るわな。

この社長、後継者が製造会社を継いでくれない以上、
自分が作った、自分の分身のような製造会社を、
売却せざるを得ない状況になって、ようやく後継者の気持ちが
わかったようです。

では、これは、どうでしょう?

同じ仕事で関東と、関西で、別会社化しているだけ
人事交流もあり、顧客ターゲットも、商品ラインナップも
ほぼ同一で、規模が違うだけ

この規模が小さいほうの会社の社長を
打診されたら、どうでしょうか?

これなら、安心して引き受けていいと思います。
小さいほうの会社で、
未来の経営幹部に出会い、信頼できる仲間を連れて、
本社に戻ればいいのですから。


このように、
同じ経営力をつけるための手法でも、
後継者にとって、全然、違うのがわかります。

なにが違うのでしょうか?
それは・・・

×:一般的な会社を経営できる能力
〇:継ぐ会社を経営できる経営力

どんな会社でも経営できるオーバースペックな力を、
苦労して習得する必要はありませんし、
そんな時間はありません!!

そもそも、
中小企業は、生き残る独自の工夫で、
大企業のような一般的な組織でないケースの方が多いのです。

事業承継は、継ぐべき会社の経営能力をどうつけるか?
という話です

同じ運転の練習でも
自転車、バイク、自動車、船、飛行機
それぞれ、全く異なる運転技術が必要です。

継ぐべき会社の経営能力に直結しない
子会社とか、新規事業の経営能力をつけても
継ぐべき会社の経営ができるハズないですよね?(笑)

いかがでしたでしょうか?

もし、継ぐ!と決断して、入社したら、
どんな仕事をしていくのか? 気になりますよね?

その会社で経験する仕事の違いで、
その会社を経営する能力がつく、つかない、
の差がある。

難しいのは、
この差を見分けられるようになっても、
親である社長に、説明・説得して、適切な仕事を任せてもらえるか?
という別の問題の方です。

どちらかと言うと、後継者が理解していても、
経営者に説明できないケースが多いのではないでしょうか?
ご相談・ご感想などがあれば、お問合せからご連絡頂けると幸いです。

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。

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