親子喧嘩の本質

HPをご覧頂き、ありがとうございます。
継ぐ研ネット代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)と申します。
本コラムは、経営者を親にもち、会社を継ぐ可能性がある方を対象に、
継ぐ「不安」をテーマに書いていきたいと考えています。
事業承継で、よく発生する親子喧嘩、兄弟喧嘩。
今回は、親子喧嘩の本質について考えたいと思います。
壮絶な親子喧嘩が発生する理由はどこにあるのでしょうか?
また、親子喧嘩を避ける方法は?
大塚家具
先日、当研究会で、大塚家具の親子喧嘩が研究テーマになりました。
会員が、大塚家具の親子喧嘩が発生した理由を解説し、
避ける方法があったとしたら、どこで、何をすべきだったのか?
という議論で盛り上がりました。
ご存じのように、大塚家具は、会員制の高級家具を販売している会社でした。
大店法の改正があり、全国展開へ打って出るチャンスとみた社長勝久氏は、
当時、一橋大学から旧富士銀行(みずほ銀行)に勤めていた久美子氏を呼び寄せます。
そこで、久美子氏は大塚家具の家族的経営、
創業者勝久氏のカリスマ力に頼った組織の改革に取り組んだと言われています。
規模も大きくなり、上場していたので、組織改革は必要だったのでしょう。
しかし、10年経って取締役をやめ、自分のコンサルティング会社をはじめます。
しばらくして、大塚家具の不祥事が発生しました。
大塚家具の自社株買いがインサイダー取引にあたる。
と、証券取引等監視委員会に課徴金納付命令を受けたのです。
この処理を、外部コンサルとしてかかわった久美子氏は、その流れで社長になります。
会社のピンチは・・・
この会社のピンチに、子供が対応にあたり、そのまま世代交代する。
この流れは、中小企業でもよく聞きます。
ある産業廃棄物の会社の社長も、TVが間違った報道をしたために、
住民運動が起こり、立ち退きしろ。
という騒動が起きた際、必死に対応して、
その流れで社長交代したと話されていました。
この会社も社長が男性で、後継者が女性です。
この社長男性で、後継者女性のパターンは、
比較的コミュニケーションがとれているケースが多く、
壮絶な親子喧嘩にはなりにくいと感じていますが、
大塚家具は規模が大きすぎたのでしょうか?
大塚家具の久美子氏は社長となり、
会員制の高級家具路線を変更し、
一般客向けの中程度の価格帯の家具を扱う方向に動きだしました。
ニトリやイケアとかの低価格家具のマーケットと、
大塚家具の高級家具の中間を狙ったように見えます。
これに会員制にこだわる勝久氏が激怒し、壮絶な親子喧嘩が発生しました。
結果的には、壮絶な親子喧嘩で、ブランド力が低下した大塚家具は、
ヤマダ電機の傘下となり、会社は消滅しました。
では、この親子喧嘩の本質は何だったのでしょうか?
避けることができたのでしょうか?
会長が自殺!?
ある事業承継支援先の社長とランチをしている際、
この大塚家具の話がでました。
その社長は、大塚家具がつぶれたのは、
親子喧嘩が理由ではなく、久美子氏の経営手腕が足りなかったからだ。
高級路線をやめたのが悪い。と話されていました。
事業承継時の、壮絶な親子喧嘩はこの町でも起こっている。
地元で有名なあの会社の事業承継でも、
経営方針で、壮絶な親子喧嘩が発生し、
後継者は会社を大きくしたが、会長は自殺した。
と話されていました。会長とお知り合いだったようです。
しかも、1人だけでなく、
別のあの会社の事業承継でも、
事業承継で、会長が自殺しているが会社は存続している。と。
だから、親子喧嘩しても、
後継者が優秀なら会社は大きくなっている。
大塚家具がつぶれたのは、
後継者の戦略が間違っていただけで、親子喧嘩が原因ではない。と。
実際には、そうなのかも知れません。
でも、できることなら壮絶な親子喧嘩は避けたいですよね?
どうしたら避けることができるのでしょうか?
徐々にギャップが広がる
当然、普段から親子喧嘩をしていたら、後継者候補にはなりません。
最初は、親子の信頼関係があって、後継者候補になっているハズです。
それが、徐々に、大きな溝ができてくる。
親子のコミュニケーション不足もありますが、
私は、目的、目標、ビジョンや理念と呼ばれるものが、親子で共有できていない。
これが、壮絶な親子喧嘩の原因だと感じています。
大塚家具の事業は、
富裕層に、高級家具を、会員制のフルサービスで、
提供するビジネスモデルでした。
勝久氏がこだわるビジネスモデルです。
一方で、全国展開で規模を拡大するには、
会員制では限界があると感じた久美子氏は、
会員制をやめようとします。
後継者は、認められたいという衝動もあり、
事業を承継している途中で、
親とは異なることをやりたくなり、
異なる目標地点が生まれることはよくあります。

目的地が親子で異なっていても、
最初は、小さなギャップなので、見過ごされがちです。
そもそも、入社して数年は、異なる目標なんて思いつかない場合もあります。
しかし、徐々に会社の実態を把握すると、
こうすべきではないか?
これは間違いではないか?
と、いろんな疑念が生まれてきます。
そして、本来はここに向かうべではないのか?と、
心の中で親とは異なる目標地点を目指すようになります。
このように、親子で目標地点が異なると、
時間が経つにつれて、親子の溝は大きくなり、
最後は壮絶な親子喧嘩へと発展するのです。
企業理念
中小企業では、この目標地点というか、ビジョンや理念は、軽視しがちです。
しかし、社員を急激に増やす必要がある場合、
M&Aで会社を買った場合、そして事業承継をする場合などでは、
企業理念を明文化し、それを徹底していく必要があります。
理念っていうと大げさかも知れませんが、
この商売は、誰に、何を、どのように提供し、どのような価値を感じてもらいたい!
を明確に、文章化し、それを徹底するのです。
少ない人数で運営する中小企業にとって、
この目標地点がブレると、社員が混乱し、会社は疲弊し、つぶれかねません。
船頭多くして、船山にのぼる。
ということわざがありますが、目標地点は1つ。
全員が目指す地点は1つにしなければ、なりません。
大塚家具の場合も、親子どちらか1つの方針に統一していたら、
社内は混乱せず、今も存続していたのではないか。
と思うことがあります。
久美子氏の価格戦略はちょっと理解できない部分もありますが、
社員が混乱しなければ、生き残る道はあったのではないでしょうか?
喧嘩を避ける方法
後継者にとって、親と同じようにやっていたら、
社長の子供だから・・・
という扱いを受けて、なにか違うことをしたくなるのはわかります。
でも、そこは我慢して、
まずは、親と同じレベル、同じ方向性を目指してください。
後継者は、企業理念を文章にまとめ社内に周知する役割を、
自ら買って出るぐらいの気持ちが必要です。
なぜ、この会社を興したのか?
どんな想いで興したのか?
親子喧嘩を避け、社内を同じ方向性に向けるため、
私は、社史編集をお勧めしています。
創業〇〇周年記念事業として、社史を編集する。
社長や、引退した役職員を含めいろんな関係者にインタビューをして、
後継者が社史をまとめると、
親が会社を興した想いや、苦労の歴史を理解し、
見えない理念が腹に落ちてきます。
でも、自分から社長には言い出せないですよね?
我々に、相談頂ければ、これらをオーナー社長に説明いたしますのでご安心ください。
ご質問・コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。
投稿者プロフィール

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本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。
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