逃げるは恥だが役に立つ?

コラム:承継不安の処方箋

HPをご覧頂き、ありがとうございます。

継ぐ研ネット代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)と申します。
本コラムは、経営者を親にもち、会社を継ぐ可能性がある方を対象に、
継ぐ「不安」をテーマに書いていきたいと考えています。

継ぐ決断の話ばかりしていましたので、
今回は、継がない決断について書きたいと思います。

後継者候補のあなたは、
必ず、「継ぐ」「継がない」を決断する日がきます

しかし、後継者候補にとって、
「継がない」という決断は、どこか“逃げ”のような響きがあり、
なかなか決断できない、宣言できないものです。

でも、継がないことは、 本当に「逃げ」なのでしょうか?

多くの後継者候補は、幼いころから
「いずれはお前が」
「長男なんだから」
と、まわりの期待を背負って育ちます

そんな空気の中で、

「継がない」という言葉を口にすると
“裏切り”のように感じてしまう


だからこそ、迷い、葛藤し、
心のどこかで罪悪感を抱いてしまう。

でも、当然ですが、
継ぐのはあなたの「義務」ではありません

「継がない」と決めることは、
親の人生や、家業を否定することになる・・・
と、相談を受けたことがあります。

もちろん、親の人生も、家業も否定している訳ではなく
別の仕事を続けたい。

という気持ちから「継がない」とほぼ決めているのに
親に言い出せない状態
でした。


厳格な両親だったこともあり、
親が、自分の人生や、家業を否定されたと思うのではないか?
という恐怖に似た不安で、言い出せなかったのです

一方で、親である社長に聞くと
「子供が煮え切らない」
「何を考えているかわからない」
「嫌々やっても社長など勤まらない」

と、多少、子供のネガティブな気配を
感じている様子でした。


しかし、
「でも、できれば継いで欲しい」
と本音もポロリ。

無理やり継がせても、うまくいく訳もなく
社員やお客様に迷惑がかかるダケ

やる気がなければ、継がせる気はない

と、至極、合理的に考えている一方、
できれば、継いで欲しいという複雑な心境です。

そこで、私は後継者にこう説明しました
社長にとっては、
あなたが「継がない」と明言することで、
はじめて、第三者へのM&Aや、社員への承継といった
次の選択肢に着手できる
のです。

あなたが、会社を継がなくても、
あの会社は無くなりません。

あなたの「継がない」決断が、
会社を活かす、次の一手を考えるトリガーです。

次の作戦を実行に移す時間を作るため、
「継がない」という宣言は、早くすべき
です

このまま放置して、
万が一、社長が、病気になったり、急死したら、
あなたは、好むと好まざるとにかかわらず、
強制的に、後を継ぐことに
なるかも知れませんよ?

と、

親の年齢もあり、親の次の行動のため、
と理解した後継者候補は、
意を決して、家族が集まるお正月に、
正式に「継がない」と、親族全員の前で、 意思表示をされました。

早く意思表示しないと、
社長にも、会社にも、迷惑がかかる

とコンサルタントに聞いて、
前から決めていたが、
正式に伝えさせてもらいたい
と、切り出したそうです

このように、
継ぐかどうかを曖昧にしたまま時間が過ぎると、

親は「いつかは継ぐだろう」と期待し、
子は「まだ言えない」と苦しむ・・・

そんな関係が生まれます。

早い段階で「継がない」と伝えることは、
親が次の選択を考えるきっかけとなり、
会社の未来を現実的に描き直すチャンスにもなるのです

この決断は、逃げではなく、
社長と、会社の未来を考えた、愛ある決断です。

この社長、
孫がいる前で怒ることもできず
「わかった、本気のようだな」
と、少し落胆した様子で、お酒を飲んでいたそうです
しかし、翌日には吹っ切れたのか、笑顔が戻ったと聞きました

次の作戦に、頭が切り替わったのでしょう。

実は、私も、この正月に息子さんと腹を割って
話してくださいね。
万が一、「継がない」と宣言されても、
怒っちゃダメですよ!

後継者候補は、継ぐのは義務ではないが、
早めに「継ぐ」「継がない」を決断して、

宣言するのは、後継者候補に課された義務
と説明し、悩みに悩んだ上での結論だから、
尊重してあげて下さいね。

と、お願いしていたからかも知れません。

いかがでしたでしょうか?

継ぐか、継がないか、
悩んでいたら専門家に相談するのも1つの手です。
継ぐ場合と、継がない場合、二つの選択肢を偏りなく説明してもらい
どちらかに決める。

放置しても、いつかは決めなければなりません。
ならば、積極的に、「継ぐ」「継がない」の結論を早めに出して、
次の人生のステージに立つべきだとお考え下さい。

ご質問・コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。

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