相続は心配ないと、聞いたのに・・・(前編)

コラム:承継不安の処方箋

あけまして、おめでとうございます。

継ぐ!継がない?後継者の「決断指南書」研究会(略称:継ぐ研ネット)
代表の辻󠄀岡 珠磯(つじおか たまき)です。

このコラムでは、経営者を親にもつ皆様の、会社を継ぐ「不安」を、少しでも軽くする方法について書いていきたいと思います。

今回は、相続あらそいの不安を考えてみたいと思います。

皆さん、相続や事業承継で親族がもめているニュース
一度は見たことがありますよね?

  • 壮絶な親子喧嘩が報道された大塚家具
  • 次男のクーデーターが報道されたロッテ
  • 長男と三男で骨肉の争いが報道された一澤帆布

報道されるような会社でなくても、
結構、身近に相続トラブルが発生していて心配になります。

うちは大丈夫だろうか
と・・・

ある電子部品卸の社長の話です。

社長

会社は、長男に任せる
だから、自社株と自宅兼社屋は、長男に遺す
残りは、長男、次男、末娘で平等に分けたらいい


と、日頃から家族に話されていました。

そして、
遺言も書いたし、相続も心配しないでいい
と、長男に説明されていた社長。

奥様も、かなりの資産家だったので、
税負担を考え、子供3人へ遺す内容は、皆、同意している。
とお聞きしていました。

その社長が他界され・・・

税理士から、遺言による相続と税務申告の説明を聞いていると、
末娘が怒りだしました。

末娘

父は、5億円もの財産を遺してくれたってこと?
で、父の遺言で、兄が4億円もらう!?
なのに私は、2,500万円?って納得できない!
父は、ずっと平等と言っていた!!

と、だんだん語尾が荒くなりました。

一息おいて、
専務から社長となった長兄から、

会社以外は平等に

と父が話して、みんな納得していただろう?
と、説明しますが、末娘は納得しません。

その日は、険悪なムードで解散となりました。

後日、末娘は専門家に相談したようで・・・

末娘

私には遺留分があるって聞いたわ
私と次男と母の遺留分は、合計で約40%よ
この遺留分は払ってもらいますからね!

と・・・

遺留分とは?

・法定相続人に、最低限保証されている取得分
・事例だと、配偶者は1/4、子供は1/12もらう権利がある
・配偶者、次男、末娘を合計すると、1/4 + 1/12 + 1/12 = 5/12 ≒ 41.6%
※遺留分の詳細は、別のコラムで解説します

これには、さすがに後継者も激怒しました。

相続税の約1億円を払うだけでも困難なのに、
追加で、遺留分1億円以上の現金なんて、どう考えても無理だろ!!

しかし、末娘がし主張ている内容は法的には正しく、
請求されたら、現金で払う義務が、長兄にはあったのです。

後継者は、途方に暮れ、事業に手につかなかった。
と言います。

後日、すべてが片付いた後、
長兄にお話しをうかがうと・・・

私の相続は心配しなくていい、と、父に言われ、

本当かな?

と少しは、考えたものの・・
会社を継ぐのに、頭がいっぱいで、
相続対策を確認しなかった自分のミス・・・

10年前、入社前後に確認していたら、
ここまで苦労することはなかった。

と、苦笑いされていました。

相続対策の不安があっても、放置してる後継者が多いのですが、
皆さんはどうでしょうか?

話は、ちょっと脱線しますが・・・
時代劇で、殿様が、激怒したときに言うフレーズ

たわけ者!

この語源をご存じでしょうか?
諸説あるようですが・・・

相続で、田んぼを分ける=「田分け」
からきている説があります。

殿様としては・・・

相続の度に、子供たちに、田んぼを分けて、与えると、
だんだん、田んぼの規模が小さくなり、作業効率が低下して、
年貢が減る・・・

だから・・・

相続で田んぼを子供に分けるようなバカなことをするな!
という意味で、「たわけ!」 となったとか。

これ、

事業承継も似ています。

相続で、子供の数だけ、会社を分割すると、
当然、効率は落ち、収益力は低下します。

子供の数だけ、自社株を分割すると、
兄弟の意見が分かれ、チャンスに即応できず、
社内も分裂し、企業力は低下します。

経営の目線だけで言うと、
子供に平等に分けない方が正しい・・・

しかし、後継者に集中して遺すと、兄弟姉妹でもめる・・・

難しいですよね?

相続発生で、もめない対策がないと・・・
今回の事例のように、

・社長の死後に、
・文句を言いそうにない人からも、
・多額の遺留分を請求され、
・資金繰りがつかず、経営困難におちいる

このよく聞く失敗パターンにはまる可能性があります。

しかし・・・

今、文句を言わない人が豹変するのは、
想像しにくいし・・・

子供から、親に対して、

どんな相続対策をやっているの?
財産は全部でいくらあるの?
遺言の内容は?

とも聞きにくい・・・

本当、事業承継って、難しいですよね・・・

相続は心配ないと、聞いたのに・・・

少し長くなったので、今日は、ここまで。
事例の結末は、次回お話しますね。

今回、会社を継ぐ決断には、
相続対策の内容を確認しないと、あぶないことは、
ご理解いただけたと思います。

継ぐ研ネットでは、
相続対策の確認「相続診断」を実施し、
よくあるトラブルが発生するリスクはないか?
の確認と対策を研究しています。

ご相談、コラムのご感想などがあれば、お問合せから、ご連絡頂けると幸いです。

以上

投稿者プロフィール

tamaki
tamaki
本研究会 代表
後継者の決断コンサルタント™
大手証券で相続・事業承継の専門職を経験。のべ1000社以上の経営者と面談。親子の会話不足が、後継者の情報不足を生み、承継を困難にしていると実感。後継者にもっと情報提供すべき。と説く中小企業診断士59歳。神戸市出身。

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